【有限会社ふとらはぎ】成功者への道

「え〜、こちら上空のぶどらばぎ黒酢、ぶどらばぎ黒酢、地上の有限会社ふとらはぎ、誰か応答願います、ど〜ぞ。」

「こちら有限会社ふとらはぎ、マウストゥマウスでございます、ぶどらばぎ黒酢社長、応答いたします、ど〜ぞ。」

「あ〜、マウストゥマウス?そちらはその後何か変わったことはないでちゅか?ど〜ぞ。」

「えー、こちらからは社長達の姿を、望遠鏡でも確認できなくなりましたが、特に変わったことはございません、ど〜ぞ。」

「そうでちゅか、それは良かったでちゅ。こちらはもう、振り返るのも怖いくらいのところまで来ていまちゅ、そのまま見張りを続けてくだちゃい。根元に何かあった時が一番困りまちゅから、何かあればすぐ連絡くだちゃい、ど〜ぞ。」

「了解いたしました、社長、どうかお気をつけて…!ど〜ぞ。」

「はい、皆で気をつけまちゅ、それでは通信を終わりまちゅ、ど〜ぞ。」

ガチャ、ジー…プツッ。


ふー!

もうどれくらい登って来たんでちゅかねえ。
地上からも見えないくらいのところまでって、もうほとんど天空でちゅね。
心なしか空気も薄く感じまちゅ。

視界にモヤもかかってきまちた。
も、もしかして、これ、雲の中でちゅ?

「皆さん!遂に雲の中まで来ちゃってまちゅ!具合が悪くなりそうな時は、遠慮なく言ってくだちゃい!社員の体は私の体!決して無理しないでくだちゃいね!」

「ちゅ〜っ!!(オー!!)」

こういう非日常が現れた時、チュレンジしてみるのがネズミ根性でちゅ。
命を失うこともあるかもしれまちぇんが、なんだかピンと閃いたんでちゅ。

天下の商売人、世間を騒がせるほどの私が、このカンを無下にするわけがありまちぇん。

この間の我社の看板の「ぷとらぱぎ」の○の落書きの時だって、これはもしかして!?のカンだけを頼りに、海外のユーメーオーハクションに参加して2億円ゲットしたんでちゅから!

天才的にうんこがついている私のカンは、空き缶なんかじゃないっていうことでちゅ。
ドッカン!ドッカン!と鳴るくらいの、チュウドキュウのカンなんでちゅ!

我社に侵入して現行犯逮捕された、あのみだらなどら猫がゴソゴソしていた場所から、まさかこんな大きな木が生えてくるなんて…!
無視して登らないわけにはいきまちぇん。

社長の私自らが命をかけて登りたくなる…、そんな金とマロンのニオイがプンプンしているんでちゅ。
これに賭けなくてどうするんでちゅ?

私の目標は、有限会社ふとらはぎを無限会社にして、ありとあらゆるをふとらはぎ色に染めることでちゅ。私の名前は天下に響き渡り、皆は私を崇めるんでちゅ。
そのためには、どんなチュンスも絶対にモノにしてみせるんでちゅ。
たとえ、ここから落ちて死んだとしても、後悔なんか絶対しまちぇん!

今まで生きてきて、こんなに大きくて高い木が一日で生えるなんて、見たことも聞いたこともないからでちゅ!

あの、トムにそっくりだったどら猫、ただの薄汚いみだらな侵入者ではなかったということでちゅね。

なんのためにこんなことを?なんの目的で?
スパイ?にしては、あまりにも堂々と入りすぎているし、抵抗もせず、すぐ捕まりまちた。

今は塀の中のはずでちゅから、確認もすぐできまちぇん。面会しに行くなんていう、まどろっこしいことはしないチュ義でちゅ。

なぜなら、この魔法みたいな木は、いつ枯れるかわからないからでちゅ。もしかしたら、面会を待っている間にも枯れたり消えたりしてしまうかもしれまちぇん!

うんこを逃さない行動力、それこそが成功者への道でちゅ!
私はそのうんこを逃さない力、持ってまちゅ!

この謎の木の上にはきっと、有限会社ふとらはぎを成功に導く、とんでもないものがあるはずなんでちゅ!


あれ?
雲が晴れてきまちた。
視界がよくなってきまちた。

「皆さん!無事でちゅか?息、できてまちゅか?遂に、雲の上まで来たみたいでちゅ!すごいでちゅ!この世界の歴史の中で、ネズミが雲の上にいるなんてことを、誰が想像したでちょうか…!一緒にここまで来てくれてありがとう!本当にありがとうでちゅっ!!」

「ちゅ〜っっ!!」

「素晴らしい景色でちゅ!見てくだちゃい!この雲の上を!黄金のコインで辺りが光輝いていまちゅ!やっぱりありまちたね…!タダの木ではないと思っていまちた…!この黄金のコインをとるために、まず、私が木から雲に降りてみまちゅ…!」

「ちゅ〜!?」

「大丈夫でちゅ、心配いらないでちゅ。なんのためにここまで皆で登ってきたんでちゅか。ここでチュンスをモノにしなかったら、一生後悔しまちゅ。社長として、皆を危ない目に遭わせるわけにはいきまちぇん。もし、もしも、私がこの雲に降りられず、ここから落ちてしまったとしたら、皆さんは木をつたって気をつけて蔵に帰ってくだちゃい。社員の命を守るのも、大事な社長の役目でちゅ。最後になるかもしれないこの私の勇姿を、しかと見届けてくだちゃい。」

「ちゅ〜…」

「そんな目で見ないでくだちゃい、これが、社長としての在り方でちゅ。それでは、行きまちゅよ…」

そ~っと、そ~っと、でちゅ。

あ?れ?

「降りられまちた!!私、やりまちた!どうやら落ちまちぇん!!」

「ぢゅ〜〜っっ!!!」

「皆さんもこの雲の上に降りてみてくだちゃい!そして、ここにある黄金のコインを、背中のリュックに入るだけ、ありったけとりまくりまちょう!」

チャリーン!チャリーン!チュリーン!チュリチュリーン!チャリチャリチュリチュリーン!


あちこちから、黄金コインゲットの音が響き渡っていまちゅ。

社員を犠牲にせず、まず私からという仮スマン性溢れたこの社長としての姿勢と、雲に降りられたという奇跡、そして、ここに来た皆が雲の上で黄金コインをゲットできているこの現実…、皆の顔から歓びがはちきれんばかりに溢れ出ていまちゅ!
パーフェクトでちゅ!
私はやっぱりうんこがついてまちゅ!


…ん?
あれはなんだ?
雲の、もっと奥の奥のほう…、緑の…。